五十肩とは、肩関節に痛みと運動制限をもたらす疾患の総称です。また、五十肩という病名についてですが、四十肩ともいわれ最近では、肩関節周囲炎ということが多いようです。
・肩峰下滑液包炎
・腱板断裂
・インピンジメント症候群
・肩関節石灰沈着
・上腕二頭筋長頭腱障害
・スポーツ障害肩
五十肩に含まれる中でも腱板断裂、インピンジメント症候群、石灰沈着で重度で手術の適応がある様な場合は、五十肩と鑑別する必要があります。
それ以外のものと腱板断裂、インピンジメント症候群、石灰沈着でも保存療法対応となる様な場合には、いわゆる五十肩と考えて良いとおもいます。
主な症状は、肩関節周囲の痛みと動きの低下です。特に結髪、結帯、更衣などの日常生活動作が障害されます。夜間時痛(就寝時の痛み)も特徴的であり、罹患した関節を下側にして横向きに就寝することができない場合が多いです。五十肩の病期は、疼痛痙縮期(炎症期)、拘縮期、回復期に分類され症状もそれぞれの時期で異なります。(図1)
図1 五十肩の病期と症状
疼痛痙縮期 | 拘縮期 | 回復期 | |
安静、夜間時痛 | ************** | ||
運動時痛 | ********************** | ||
拘縮、可動域制限 |
********************** |
・疼痛痙縮期(炎症期)
疼痛が主体の急性期です。明確な誘引はなく運動時痛、夜間時痛、安静時痛が、出現し徐々に肩関節の動きが低下する。
・拘縮期
夜間時痛、安静時痛は、徐々に軽減していきますが、肩関節は拘縮し可動域制限が起こり、運動時痛は、持続します。
・回復期
可動域制限も徐々に回復し運動時痛も消失します。
図2手を下げている時と上げた時の骨の動き方
図2を見ると手を下げている時と上げた時を比較すると上腕骨、肩甲骨、鎖骨、肋骨の動きがよくわかります。このような肩関節の動き方が、理想的な肩関節の動きです。
胸椎については第1~第2胸椎以外画像上確認できませんが、肋骨と同時に胸椎も動き胸郭全体として動きます。この胸郭の動きに連動して肩甲骨が動き上腕骨が回旋して手が上がります。
胸郭の動きが不十分な場合は、無意識に肩甲骨を大きく動かしたり、上腕骨の回旋でそれを補います。
胸郭全体の動きは、とても重要で日常生活の手を動かす動作では、図2のような上下の動きだけではなく、全体がねじれるような動きも含め様々な手や腕の動作時に連動して無意識に動きます。
中高年から増えてくる五十肩、そのはっきりとした原因はわかっていません。
肩関節に痛みが発生しそれが消失するまでの期間は、約1ヶ月~1、2年と大きく差があり、また痛みが消失するまでの期間が長期に及んだ場合、肩関節が正常に可動しなくなることが多いです。
いわゆる五十肩で比較的早期に痛みが消失する人と長期化する人の大きな違いは、五十肩になる以前からの手や腕を動かしたときの胸郭全体の動きとそれに連動する肩甲骨、上腕骨などの動きに大きな要因があると考えられます。
胸郭の動きが悪い人のすべてが、五十肩になるわけではありませんが、痛みの消失に6ヶ月以上かかるような場合は、程度の差はありますが胸郭の動きは乏しいです。逆に胸郭の動きが良い人の場合は、肩関節の痛みを訴えて来院されても腱板断裂などの場合を除けば比較的早期(1,2週~1,2ヶ月)に痛みは消失し肩関節の動きも正常に回復します。
当院での五十肩に対する治療は、安静、夜間時痛及び運動時痛の早期改善だけではなく、胸郭全体の動きを改善することにより痛みの消失後の肩関節の動き方を理想的なものに近づけることを目指します。